2016年 4月 5日

平成28年3月31日付けで事務連絡「医療機器プログラムの承認申請に関するガイダンスの公表について」が厚生労働省医薬・生活衛生局 医療機器・再生医療等製品担当参事官室より、各都道府県衛生主管部(局)薬務主管課へ発出されました。

医療機器として製造販売の承認等の対象となるプログラム及びこれを記録した記録媒体(以下「医療機器プログラム等」という。)の承認審査において、共通して審査上の論点となった事項を抽出の上、「医療機器に関する単体プログラムの薬事規制のあり方に関する研究」(平成27年度日本医療研究開発機構研究費(医薬品等規制調和・評価 研究事業)において検討を行い、別添のように医療機器プログラム等の承認申請に関するガイダンスが取りまとめられました。疾病診断用プログラムや疾病治療用プログラム等の製造販売承認申請書及び添付資料の作成に際し参考とするよう、関係業者に対しての周知の連絡がなされました。

(以下は別添の概要です。)

医療機器プログラムの承認申請に関するガイダンス

疾病の診断の支援や治療計画などに用いられる医療機器プログラム(医療機器の定義に該当するプログラム)のこれまでの承認審査の実績等を踏まえ、審査に際して必要な評価をはじめとした、現時点で考えられる医療機器プログラムの承認審査上の共通の論点を以下のように取りまとめた。
なお、医療機器プログラムの承認申請の可能性が明らかになった段階で、必要に応じて独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)の各種相談制度を活用することにより、承認申請に関係する問題点を解決しながら開発を進めていくことが強く推奨される。

1.医療機器に該当するかどうかの判断
開発中のプログラムの使用目的、機能、使用する状況、使用者等を明確にした上で、下記の事項を参考に、当該プログラムが医療機器に該当するかどうか判断すること。
医療機器プログラムの特性等を踏まえ、人の生命及び健康や機能に与える影響等を考慮し、医療機器プログラムの該当性の判断を行うに当たり、次の2点について考慮すべきものであると考えられる。
(1) 医療機器プログラムにより得られた結果の重要性に鑑みて疾病の治療、診断等にどの程度寄与するのか。

(2) 医療機器プログラムの機能の障害等が生じた場合において人の生命及び健康に影響を与えるおそれ(不具合があった場合のリスク)を含めた総合的なリスクの蓋然性がどの程度あるか。

2.クラス分類及び一般的名称
(1)クラス分類
医療機器プログラムを含む医療機器のクラス分類については、クラス分類通知で示しているクラス分類ルールに基づき判断される。
医療機器プログラムについては、原則として能動型機器に関するクラス分類ルール(9~11)を適用するものであること。

(2)一般的名称
クラス分類告示により、開発中の医療機器プログラムのクラス分類を踏まえ、既存の一般的名称に該当するか、それとも既存の一般的名称に該当せず、一般的名称を新設する必要があるかを確認すること。

3.承認申請書の記載
医療機器プログラムの承認申請書及び添付資料の各欄の記載事項は、「医療機器プログラムの取扱いについて」(以下「プログラム基本通知」という。)の「8 製造販売承認申請の取扱いについて」、「医療機器プログラムの製造販売承認(認証)申請書及び添付資料の記載事例について」などの関連通知等を参考にすること。

4.審査上の論点
疾病の診断の支援や治療計画の支援等を行う医療機器プログラムの安全性及び有効性を科学的根拠に基づいて適正に評価するために留意すべき審査上の論点を以下に示す。

(1)医療機器プログラムのコンセプト、機能の実体に関する事項
①臨床的意義
医療機器プログラムのコンセプトを踏まえて、当該医療機器プログラムを使用することの臨床的な意義を明確にしておくことが必要である 。

②機能の把握と特定
医療機器プログラムの設計上の要求事項の詳細を把握し、当該医療機器プログラムの機能を特定できるようにしておくことが必要である。また、入力データ及びその処理結果である出力データを特定すること。

③計算アルゴリズムの明確化
入力に対して、所定の計算等の処理を施すことにより出力を返す形態の医療機器プログラムにおいては、正常な動作が保証される入力条件、当該医療機器プログラムの計算フロー、アルゴリズムなどを明確に説明できるようにすることが必要である。

④プラットフォーム、使用環境の要件
医療機器プログラムはプラットフォームにプログラムをインストールして使用することが前提である。設計上の要求事項を達成するために必要なプラットフォームの要件を明確に説明できるようにすることが必要である。プラットフォームの基本的な安全性は当該製品の製造事業者において確認されていることが想定されるものの、当該医療機器プログラムをインストールするプラットフォームが医療現場の環境において用いられる場合に、患者、使用者等への安全性が確保されることを医療機器プログラムの開発者として説明できるようにしておくことが必要である。
また、同一のプラットフォームに共存しうる他のソフトウェアの影響についても検討しておく必要がある。

⑤併用が想定される医療機器、医薬品等の条件の特定
医療機器プログラムが所定の機能を達成するにあたって他の医療機器からの入力、他の医療機器への出力が必要になる場合や、医薬品とともに用いることが想定される場合は、併用が想定される医療機器等の条件を特定しておくことが必要である。なお、併用が想定される医療機器等の共同開発、規制上の手続きの要否なども検討しておくことが必要である。

(2)医療機器プログラムの評価に関する事項
①計算アルゴリズムの妥当性、臨床的意義を踏まえた評価
4.(1)で明確にされた医療機器プログラムの臨床的意義及び計算アルゴリズムは、すでに確立しているもしくは臨床的な検証・妥当性の確認が完了しているといえるのか、妥当な根拠をもって明確にしておくことが必要である。すでにそれらが確立していると認められる場合、その医療機器プログラムの臨床上の有効性及び安全性に関して、新たな評価を実施することを要しない可能性がある。一方、まだその検証・妥当性の確認が十分とはいえないケースにおいては、新たな臨床的な評価が必要になると考えられる。

②試験検体のバージョン管理
原則的に、承認を得ようとするバージョンの医療機器プログラムを試験検体として性能評価等を実施することが必要である。ただし、承認を得ようとするバージョンとは異なるバージョンの医療機器プログラムを使用して性能評価等を実施せざるを得ない場合には、それらの差分を説明するとともに、異なるバージョンの医療機器プログラムにより、承認を得ようとするバージョンの医療機器プログラムについて妥当な性能評価等が可能であることを説明することが必要である。

③比較の対象の妥当性
医療機器プログラムの評価のために比較対象を設定する必要がある場合、医療機器プログラムの使用目的、使用方法等に鑑み、妥当な比較の対象を設定することが必要である。

④入力、出力データの妥当性
医療機器プログラムへの入力データについては、当該医療機器プログラムが使用される状況を踏まえて、想定される範囲の入力データを網羅して必要な検証を実施することが必要である。入力データの標準化のための留意点があれば明確にすること。また、医療機器プログラムから出力されるデータについては、当該医療機器プログラムの臨床的な意義を踏まえて、妥当なものであることを説明できるようにすることが必要である。

⑤精度の評価
医療機器プログラムが出力する値の精度を規定する必要があるケースにおいては、必要な評価項目を検討し、臨床上許容される精度であることを評価することが必要である。(例:治療計画プログラムにより距離、角度、線量分布の計算を行う場合など)

⑥医療機器プログラムによる解析結果の実試験との相関関係の評価、実試験に対するシミュレーションの精度の評価
医療機器プログラムの出力結果の妥当性を確認する方法は医療機器プログラムの種類等により異なるが、実試験と医療機器プログラムの出力結果との相関関係、実試験に対するシミュレーションの精度の評価が必要なケースもある。診断を行う医師に対して必要な情報の提供するような診断支援を目的とした医療機器プログラムについては、別途行う臨床診断結果と比較することで偽陽性率・偽陰性率等を算出することも重要である。

(3)承認後の医療機器プログラムの変更等に関する事項
開発中の医療機器プログラムが今後、製造販売承認を受けた後に、市販後のデータの蓄積などに伴って、承認された事項を変更しようとする際、当該変更が有効性や安全性に影響を与えるものである場合は一部変更承認申請が必要になることがある。このため、将来的な機能の拡大、アルゴリズムの変更などの承認後の変更が想定される場合は、それらに留意した上で、初回の承認申請の内容として含めておくべき事項、機能等を検討しておくことが必要である。
また、医療機器プログラムの中には、参照するデータベースへのデータ蓄積などによって当該医療機器プログラムにおける判断基準や診断性能が影響を受けるなど、使用する環境によってアルゴリズムや性能等を変化させることを意図したものが今後開発されることが想定される。このような医療機器プログラムについては、当該変更の際に上述の一部変更承認申請などの変更手続きを行うか、もしくは承認審査の際にあらかじめそのような変更機能を含めて評価を行うことが考えられる。後者の場合、あらかじめPMDA の各種相談制度を活用して、そのような変化しうる特性を組込んだ場合に有効性や安全性の評価が可能かどうか、評価に当たってどういったデータや検証方法等が必要か等について十分に相談しておくことが望ましい。

5.その他
(1)ライフサイクルプロセス
医療機器の基本要件基準第12条(プログラムを用いた医療機器に対する配慮)第2項の規定は平成29年11月24日までの間は適用しないこととしているが、JIS T 2304(医療機器ソフトウェア ― ソフトウェアライフサイクルプロセス)又はIEC 62304 (Medical device software ― Software life cycle processes) を参考に開発のライフサイクルプロセスを確保しておくことが望ましい。

(2)リスクマネジメント
医療機器の基本要件基準第2条(リスクマネジメント)に基づき、医療機器プログラムを含むすべての医療機器にリスクマネジメントが求められている。この規格としてJIS T 14971(医療機器―リスクマネジメントの医療機器への適用)がある。承認申請においては、リスクマネジメントの実施状況や残留リスク等を添付資料に記載することが必要であり、この対応についても検討しておく必要がある。

(3)サイバーセキュリティ
医療機器の基本要件基準に基づき、サイバーセキュリティに関するリスク(サイバーリスク)についても既知又は予見し得る危害としてこれを識別し、意図された使用方法及び予測し得る誤使用に起因する危険性を評価し、合理的に実行可能な限り除去することが求められる。サイバーリスクが懸念される医療機器については、「医療機器におけるサイバーセキュリティの確保について」などを参考に、必要な措置を行うこと。

(4)その他の関連ガイドライン
画像診断用医療機器から得られた医用画像を元に、病変候補位置の情報をマーカで医師に示すことによって病変の検出を支援するなどの医師の診断を支援する医療機器プログラムについては「コンピュータ診断支援装置に関する評価指標」が、CT等の画像データから三次元データを構築するプログラムについては「患者の画像データを用いた三次元積層造形技術によるカスタムメイド整形外科用インプラント等に関する評価指標」がそれぞれ公表されている。製造販売承認申請に当たってはこれらの評価指標なども参考にすべきである。

(5) 製造販売業、製造業の許可・登録等
医療機器プログラムの上市に当たっては、製造販売承認の他に、製造販売業の許可、製造業の登録、QMS調査等が必要になる。

作者

  • Emergo Marketing (not verified)

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