2018年 6月 25日
このニュースのポイント
欧州医療機器規則(MDR)745/2017の付属書Iセクション23.1、および欧州体外診断用医療機器規則(IVDR)746/2017の付属書Iセクション20.1に記されている要件は、一見すると極めてシンプルです。製造業者がウェブサイトを持っている場合、ユーザー向け情報(ラベル、取扱説明書(添付文書)、技術マニュアル等)をオンラインで提供しなければならないというものです。ですが、この明確で簡単に見えるこの要件が、予測しなかった事態を引き起こす可能性があります。
まず第一の課題は、ヨーロッパでは典型的な問題、言語です。languages. この要件は、ラベルおよび添付文書に使用されているすべての言語に適用されます。ユーザー向け情報の文書化を管理している製造業者は、対象文書のすべてを比較的容易に準備することができるでしょう。しかし、製造業者によっては、翻訳を現地の流通業者に任せているところもあります。そのような場合は、該当文書を入手し、整理しなくてはなりません。企業のポリシーによって大きく左右されますが、これは困難な作業になる可能性があります。今後は、より多くの製造業者で、ユーザー向け情報を管理文書として扱うようになるでしょう。
医療機器のユーザー向け情報を、製造業者の品質マネジメントシステムに組み込むべき理由がもうひとつあります。付属書Iに規定のとおり、製造業者はユーザー向け情報の内容に責任を負っており、製造業者だけが、適合を宣言することができるのです。すべての翻訳もこれに含まれます。MDRとIVDRの第16条によると、輸入業者と流通業者は、製造業者とみなされることなく(製造業者としての責任を負うことなく)、機器にラベルを追加することができます。ただし、付属書Iの要件を満たした場合のみという条件があります(16条2項を参照)。やはり、製造業者だけが適合宣言をすることができるのです。
製造業者のウェブサイトでユーザー向け情報を提供することで、電子版取扱説明書に関するEU規則207/2012が適用されます。この規則の第1条の第2パラグラフでは、製造業者のウェブサイトで提供されるユーザー向け情報にもこの規則が適用されることが示されています。この規則では、特に注意すべき項目があります。第7条2項(g)に、ウェブサイトで提供された取扱説明書のすべての旧バージョンをウェブサイト上で公開するものとする、とあります。ここで、注意すべき点があります。電子版取扱説明書に関する規則は、医療機器と能動埋込型医療機器を対象としており、体外診断用医療機器は対象ではありません。したがって、MDRで管理される機器の、ウェブサイトで提供されるユーザー向け情報に関しては、旧バージョンも公開しなければなりませんが、体外診断用医療機器には(現在のところ)この要件がないということになります。現時点では、エマーゴとしては「旧バージョン」はMDRのもとで発行されたバージョンを指すものだと考えており、古いバージョンは、該当する機器の市販が終了してから10年、あるいは15年後に削除することができる(特定の条件が付けられるかもしれませんが)、というガイダンスが発行されるのではないかとみています。
まとめ:製造業者は、機器に関するすべてのユーザー向け情報を自社ウェブサイトで提供しなければならない。ユーザー向け情報を提供しているすべての言語でこれを行う必要がある。医療機器の場合、ユーザー向け情報のすべての旧バージョンも公開し続けなくてはならない。